なぜヒートプレスに使う素材は「塩ビ」なのか?

最近になって、以下のブログ記事を読みました。

私の記事に言及を頂いていたようで、たいへん恐縮です。いまさら遅いかもしれませんが、なぜヒートプレスに使う素材の最有力は硬質の「塩化ビニル(PVC)」(略して「塩ビ」)なのか解説します。

プラスチックもいろいろ

「金属」といっても様々な種類があります。「金」、「銀」、「銅」、「鉄」…など、その種類は多様です。

また「金属」の一種である「金」にしても、その組成の違いから「24金」、「22金」、「18金」…など、その種類は多様です。

そしてまた「金」の一種である「18金」にしても、その混合物が「銀」、「銅」、「パラジウム」などの違いにより、色味や強度などの性質が変わってきます。

同じように「プラスチック」といっても様々な種類があります。「ポリスチレン」、「アクリル」、「塩化ビニル」、「ポリプロピレン」…など、その種類は多様です。

また「プラスチック」の一種である「ポリスチレン」も、添加する成分によって色味や強度などの性質が変わってきます。

まぁ、とにかくプラスチックにもいっぱい種類があって、同じ材質であっても組成の違いで、性質が変わる物もあると憶えておいてください。

同じ「ラーメン」というジャンルでも「とんこつ」、「味噌」、「塩」、「醤油」…など、いっぱい種類があり、同じ「醤油ラーメン」でも、駅前のチェーン店の「醤油ラーメン」と、商店街の個人店の「醤油ラーメン」では味が違うのと似たような感じです。

模型工作に向く熱可塑性樹脂は主に2種類

今回の記事では熱可塑性樹脂の説明は省きます。模型工作に向くプラスチックは以下の2種類と憶えてください。

  • ポリスチレン(PS)
  • 硬質の塩化ビニル(PVC)

理由は簡単です。この2種類のプラスチックが安価で塗装や接着がしやすいからです。とても工作向きです。

まぁ、「アクリル」は接着も塗装も比較的容易な部類なんですが、高価なのと硬すぎるので気軽に加工するのは、慣れていないとちょっと難があるかもしれません。

以下は、セメダインのハイグレードタイプの模型用接着剤の裏面の説明書きです。

接着できないモノの例として「軟質塩化ビニル」、「ポリエチレン」、「ナイロン」、「ポリプロピレン」、「PET樹脂」などが書かれています。

前述のブログ記事にて

ま、じゃあPVCじゃなくて、熱に弱いPEやPPやPSじゃダメなの?っていう疑問はどこまでも続くのです。

https://yutori-michi.hatenablog.com/entry/2018/08/13/192148

と書かれていますが、そもそも「ポリエチレン(PE)」や「ポリプロピレン(PP)」は接着が難しい素材なんですね。「接着が難しい」ということは、「塗装が難しい」という意味とほぼ同じです。

接着剤や絵の具などの入れ物に使用されるプラスチック容器が、PE製やPP製が多い理由は、まさにこの特性のためです。

PEやPPは、ヒートプレスに向いていないどころか、家庭用の工作には不向きなプラスチックと言わざるを得ません。

他には、S(スチレン)成分の多めのABS樹脂だったら工作向きかもしれませんが、やはり入手性や価格などを総合的に考えると、模型工作に向くプラスチックの1番手は「ポリスチレン(PS)」で、次点は硬質の「ポリ塩化ビニル(PVC)」でしょう。

接着や塗装の知識があり、あえてPPなどを使用する場合は、もちろんありだと思います。

ヒートプレスに向くのは「塩ビ(PVC)」

工作に向くプラスチックが「ポリスチレン(PS)」か硬質の「塩化ビニル(PVC)」の2択とわかったところで、ヒートプレスに向くプラスチックはどちらでしょうか。

ヒートプレスに向く素材は、面に追従する性質を持った素材が望ましいです。

野菜の詰め放題を連想してください。

同じ形・大きさの2種類の袋があります。スーパーのレジ袋でおなじみの、触るとカサカサと音を立てる一般的な「ポリ袋」と、紙製の一般的な「紙袋」の2種類です。

さて、この「ポリ袋」と「紙袋」では、どちらが多く野菜を詰め込めるでしょうか?

…正解は、もちろん「ポリ袋」です。

一般的なポリ袋は、ある程度の伸縮性があるので、比較的多くの野菜が詰め込めるでしょう。一方の紙袋は、伸縮性が乏しいので、一定量を超える野菜を詰め込むとバリっと破れてしまうでしょう。

特に透明なポリスチレン製のプラバンは、この紙袋のように、あまり伸縮性がありません。透明プラバンでヒートプレスをすると、穴があいたり破けたりしやすいのは、この詰め放題の紙袋が破れてしまうのと似ています。

硬質なPVCを加熱すると、このポリ袋のように少し伸びる余地ができるので面に追従しやすく、とてもヒートプレスに向いています。

ちなみに、工作用のポリスチレン製の白色などの色付きプラバンは、ゴム成分が添加される場合が多いので、透明なポリスチレン製の透明プラバンと比べて伸縮性が少し加味されて、ヒートプレスはしやすくなっています。

余談ですけど白色プラバンで言えば、タミヤ製プラバンよりも、エバーグリーンやプラストラクトのプラバンの方がヒートプレスしやすいはずです。

このように透明物のヒートプレスなら硬質の透明な「塩ビ(PVC)」一択と言っても過言ではないでしょう。透明でなくてもよいならば、次点で色付きの「ポリスチレン(PS)」でしょうかね。

ヒートプレスの素材に「塩ビ」が採用されやすい理由は以上です。

まぁ、私も訳あって「塩ビ」や「ポリスチレン」以外のプラでヒートプレスすることはありますけど、特に理由や制約がなければ、ヒートプレスには「塩ビ」を使えばOKだと思います。

あとnoteにもヒートプレス関連の記事を投稿しています。

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