瞬間接着剤の基礎知識

素材・道具

※この記事は別サイトに投稿した記事を再構成しています。

硬化型のレジン(樹脂)として近年人気が高いのはUVレジンでしょう。一液性で紫外線を浴びると硬化する透明樹脂として、その手軽さからアクセサリー製作などのハンドメイド分野で人気です。

二液性の硬化型透明樹脂としては、エポキシレジンも昔から人気があります。最初は粘性のある液状なのに、固まるとプラスチック状の硬化物になるというのが、これらの硬化型レジンの最大の魅力ではないでしょうか。私自身、エポキシレジンやUVレジンは創作の材料として重宝しています。

人生を振り返ると最初に手にした硬化型透明レジンは、おそらくアロンアルフアの瞬間接着剤だったと思います。小学生の頃に、よく瞬間接着剤で遊んでいました。瞬間接着剤を吸い込み過ぎて気分が悪くなったり、硬化熱で火傷したり、指同士を接着してしまったりと瞬間接着剤にまつわるトラブルも今となってはよい思い出かもしれません。

瞬間接着剤の歴史

瞬間接着剤の主成分はα-シアノアクリレートという化学物質です。シアノアクリレートの歴史は浅く、1940年代に銃の照準器に適した透明樹脂を模索している副産物だったそうです。当時は、その接着特性に価値があると思われなかったようですが、後にイーストマン・コダック社の研究者であるハリー・クーヴァー氏らは接着剤としての価値に気付き、1958年に世界初の瞬間接着剤「イーストマン#910」が販売開始となりました。

世界初の瞬間接着剤は、写真用品メーカーとして名高いイーストマン・コダック社から発売されたというのは意外ですね。

瞬間接着剤が固まる仕組み

二液性のエポキシレジンは主剤と硬化剤を混合して熱反応で硬化する熱硬化型レジンです。UVレジン液はUV(紫外線)を浴びることによって硬化する紫外線硬化型レジン(光硬化型レジン)です。

瞬間接着剤の主成分であるシアノアクリレートは、接着面や空気中の水分と反応して硬化します。このような性質のレジンを湿気硬化型レジンと呼びます。

ちなみにシアノアクリレートは水以外にアルカリ成分と反応しても硬化するので、瞬間接着剤の硬化促進剤にはアルカリ性の成分が含有されています。

逆に瞬間接着剤が硬化不良を起こしている場合は、酸性の成分に硬化を阻害されている可能性があるということですね。

瞬間接着剤の種類や性能

ホームセンターや模型店の店頭では、いろいろな種類の瞬間接着剤が置いてあります。瞬間接着剤の主成分はシアノアクリレートですが、添加剤の種類によって様々なバリエーションの瞬間接着剤があります。

たとえば粘度を上げる添加剤が入った瞬間接着剤はゼリー状、衝撃に強くなる添加剤を加えれば耐衝撃用など、瞬間接着剤の性能差や価格差は添加剤の差によるところが大きいと思われます。

ティッシュや布で拭うとヤケドする危険性あり!

瞬間接着剤は水分と反応して熱を出しながら硬化します。瞬間接着剤をティッシュや布で拭いてしまうと急速に反応が進んで高温になります。火傷の原因になりますので気をつけましょう。あとズボンなどにも垂らさないように注意しましょう。軍手での作業も危険です。作業時はポリエチレン製の手袋着用や、接着剤が垂れそうな部位に食品用ラップなどを巻いて防護するとよいかもしれません。

手や指に付着した場合はお湯で揉む

瞬間接着剤を使っていると指同士がくっついて離れなくなった経験はあるでしょうか?私はあります。指の水分と反応してすぐに固まってしまうんですよね。さすが瞬間接着と名乗るだけのことはあるなと感心します。

アセトンという成分を含む瞬間接着剤はがし剤(リムーバー)があれば比較的簡単にはがすことができます。アセトン入りのマニキュアの除光液でも同じ効果があります。ただし、アセトンは有害な成分などで多用は禁物です。

アセトンに頼らなくても、瞬間接着剤は熱に弱いので40度くらいのお湯に指をつけて、ゆっくりと指同士を揉んでいけば少し時間はかかりますが接着効果が弱くなり、はがすことが可能です。

なお、瞬間接着剤は熱に弱いので土鍋などの火にかけるような物の修繕には向きません。接着部分がポロリと取れてしまいます。逆に間違えて接着した場合、その接着物が熱に耐えられる素材(たとえば金属同士など)ならば、お湯で煮込めば接着をはがすことが可能です。

使用する際は常温で

瞬間接着剤は冷蔵庫で保管すると長持ちします。個人的には接着剤を冷蔵庫に入れることは推奨しませんが、接着剤として使用する際は常温に戻して使うようにしましょう。冷たいままだと接着剤としての性能が発揮しにくくなります。まぁ、これは接着剤全般に言えることですが…。

白化現象

瞬間接着剤を使うと接着物の表面や周囲が白く粉をふいたような状態になることがあります。これを白化現象と呼びます。揮発したシアノアクリレートが空気中の水分と反応して硬化。その硬化物が落下・付着して白い粉をふいた状態にしてしまいます。

適量を使うようにして揮発するシアノアクリレートの量を抑えるか、硬化促進剤を使って空気中の水分との反応よりも早く硬化させると白化現象は起きにくくなるでしょう。また、瞬間接着剤の中には低白化をうたう製品もあります。

ちなみに指紋採取の方法の1つに、揮発させたシアノアクリレートを指紋跡に残った水分と反応させて指紋を採取する、その名もシアノ法というものがあります。瞬間接着剤の白化現象をうまく利用した例でしょう。

ミニチュアフード製作などでは瞬間接着剤を使う機会は少ないかもしれませんが、使い方によっては面白い素材なので、今後いくつか作例を発表できれば…と考えています。

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