メタノールの危険性について

解説

最近、メタノール入りの接着剤がSNSで話題になっていました。メタノールが入った接着剤は性能が高いので、使う方もいらっしゃることは理解できます。しかしながら、メタノールの危険性について知らない方も多いようなので、今回はメタノールの危険性を簡潔に解説します。

メタノールとは?

メタノールとは「メチルアルコール」のことで、アルコール類の一種になります。

メタノールは劇物

日本の法律では、メタノールは『劇物(げきぶつ)』になります。劇物とは、人体に有害なものです。劇物よりもさらに強力な、人体にとても有害なものは『毒物(どくぶつ)』に分類されます。代表的な毒物としては「砒素(ひそ)」や「水銀」が有名でしょうか。

劇物は、毒物ほどではないけれど人体に有害なものになります。

ちなみに、人体にとてもとても有害なものは『特定毒物』になります。

メタノールは飲まなければ大丈夫?

SNSでは「メタノールは誤飲しなければ大丈夫」といったような声も見かけますが、これは間違いです。メタノールは蒸発した気体を吸うことも危険です。また、皮膚からも吸収されるので、素手で触ったりしないようにしましょう。皮膚からの吸収による死亡例もあります。

経皮的にメタノールを吸収した小児48人のうち30人に重篤な呼吸抑制がみられ,14人は昏睡に陥った。11人は発作に襲われ,7人は無尿あるいは重篤な乏尿を示し,12人が死亡した。41) (Giminez et al., 1968)

http://www.jpec.gr.jp/detail=normal&date=safetydata/ma/dame4.html

メタノールを使う場合は、喚起のよい場所でマスクや手袋を着用しましょう。(できれば防毒マスクが望ましいです。)また、後ほど解説しますが、火の気のない場所で使うようにしましょう。

メタノールは目が見えなくなる

メタノールの有害な効果として、目が見えなくなる症状が有名でしょう。『メチルアルコールは「目散る」アルコール』という言葉もあるほど…。

人間の目には、入ってきた光を感じる「網膜(もうまく)」という組織があります。メタノールを吸いこんだり、皮膚から吸収したり、口から取り込んだ場合、体内に入ったメタノールは網膜で最終的に「蟻酸(ぎさん)」に変わります。この蟻酸が目に対してダメージを与えて、目が見えなくなる障害を起こしてしまいます。

なお、失明する量は10ml以上が一般的だそうです。

ヒトの致死量は30~100ml以上,失明は10ml以上とされているが個人差が大きい

http://jsct-web.umin.jp/shiryou/archive2/no12/

ちなみに、メタノールは目だけではなく脳や内臓などもダメージを受けます。

メタノールでの死亡例は多い

今も昔も世界中でメタノールによる死亡事故は多発しています。「メタノール 死亡」などで検索すると、たくさん出てくると思います。

体調が悪化した場合は医療機関に

メタノールを使って体調が悪くなった場合は、速やかに医療機関で受診しましょう。体内に入った量にも左右されますが、メタノール中毒の症状は少し遅れて出てくることもあるので注意しましょう。

摂取は死亡2日前か=妻、翌日に中毒症状―メタノール混入・警視庁
東京都大田区で起きたメタノール中毒死事件で、殺人容疑で逮捕された製薬大手「第一三共」の社員吉田佳右容疑者(40)の妻容子さん(40)がメタノールを摂取したのは死亡の2日前とみられることが16日、捜査関係者への取材で分かった。

メタノールは燃えやすい

メタノールは、アルコール類の中でも非常に燃えやすい性質があります。ちょっとした電動工具からの火花でもすぐに発火します。冬場のストーブなどの近くで作業はしないようにしましょう。

メタノールの炎は見えにくい

メタノールの炎は明るい場所では非常に見えにくい性質があります。以下のYouTubeの動画は、1981年のインディ500という自動車レースでの火災事故映像です。当時の燃料はメタノールで、そのメタノールが引火して火災が発生しました。

この映像、炎は見えましたか?

明るい場所ではメタノールの炎は見えにくいと知らなければ、何が起こったかわからないと思います。

以下のYouTubeの動画は、メタノールではありませんが消毒用アルコール(おそらくエタノール)を燃焼させた札幌市消防局消防科学研究所の実験動画です。

着火した当初は、ほとんど炎が見えなかったと思います。熱を感知する赤外線カメラ映像では、燃えている様子がよくわかります。

メタノールの使用は避けよう

人体に有害な成分ほど接着剤や塗料としての性能が高かったりするので、使いたくなる気持ちはよくわかります。しかし、長く健康で創作を続けたいのならば、できるだけ安全性の高い素材や手法に代替するべきだと思います。

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